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2024.07.20

「日本の伝統染色技法 -柿渋- 」

「日本の伝統染色技法 -柿渋- 」
日本独自の伝統技術にフォーカスを当てたモノづくりを展開する「a IN U COLLECTION (エー イン ユー コレクション)」より、染色技法【柿渋】を用いたアイテムを発売いたします。
今回採用した、日本の伝統的な染色技法である【柿渋】の魅力について深掘りします。
【柿渋とは】

柿渋染めは、未熟な青い渋柿から抽出される天然の染料を使った染色方法です。柿渋には多くのタンニンが含まれており、染色に重要な役割を果たしています。タンニンは防腐・抗菌作用を持ち、染色された布を長持ちさせる効果があります。柿渋に含まれる酪酸という成分は防腐剤や防水剤としての効果に寄与します。

しかし、この「酪酸」という成分は、特に発酵過程で独特の臭いを発することが多く知られています。
現代の柿渋染めでは、酪酸を除去する技術が用いられ、臭いの少ない製品が作られています。
そもそも柿渋染めの起源は古代日本に遡り、奈良時代には建築用木材の防腐剤として使用され、平安時代になると衣服や布の染色など日常生活に広く利用されるようになったことが柿渋染めのはじまりとされています。
【柿渋の魅力】

柿渋染めの魅力は、その独特の色合いと風合いにあります。柿渋染めの布は、時間が経つにつれて色が深まり、美しい経年変化が現れます。この色の変化は自然素材ならではのものであり、化学染料では再現できないものです。柿渋染めがされた布は丈夫で長持ちし、使い込むほどに柔らかくなり、風合いが増していきます。

さらに、柿渋染めは環境に優しい染色方法としても評価されています。天然素材を使い、環境負荷が少なく、SDGs(持続可能)なものづくりの一環として注目されています。

また、現代では柿渋染めは高級な染色方法とされています。
特定の種類の渋柿を原料として使いますが収穫量が少なく、製造に時間と手間がかかります。また、自然素材で供給が限られているうえ、防水や抗菌など多用途に需要が高いことも要因です。
今回デンハムのアイテムに落とし込んだ柿渋は匂わない、酪酸を取り除いた、純度の高い柿渋を使用し制作しています。
デンハムの採用した柿渋染め、こだわりの一部分を深掘りします。

【こだわり】

柿渋染めされたモノをご存知の方は、あの独特な匂いも想像がつくのではないでしょうか。
柿渋に含まれる「酪酸」は、柿渋の魅力である独特の色合いや風合いを与えます。しかし、それと同時に、腐ったような匂いの原因でもありました。
現代ではその臭いの原因である酪酸を、除去することで臭いの少ない製品を作ることが技術的に可能となり需要も高まっています。
浸透膜の加工により、純度の高い匂いのない柿渋を抽出。酪酸を含む度合いによっても、染色時の風合い、深みが変わります。
染色時には柿渋を適度に薄めることでムラを防ぎ、生地自体も湿らせてから柿渋につけ職人の手作業でもみ込んでいきます。すると、色素が生地の表面に均一に付着しやすくなり、柿渋を表面にとどめた状態で乾燥させ、その工程を繰り返し「重ね染め」という方法で色を濃くしています。
さらに、染めた生地は乾燥する時に色素が移動し、山の部分で濃くなり、谷では薄くなることもあり風合いと色のムラが生まれ、一点一点の個体差が柿渋の深みとなっています。

柿渋の染色は色の深みや風合いを調整する際に必ず職人の技術が必要であり、高い純度の柿渋を使用することで色の均一性が増し、最終的な染色品質が向上します。
職人技の一つ一つの工程で同じ生地でも風合いが変わり、雑味を加えることで、個性を引き出すことができる、まさに日本の伝統技法の染色方法です。
【最後に】

柿渋染めは、タンニンと酪酸の特性を活かした古代日本から続く伝統的な染色方法です。その価値の高さと美しさは、希少な原料、手間のかかる製造過程、多機能性、独特の風合いに起因しています。これらの要素が組み合わさることで、柿渋染めは現代でも高い評価を受け続けています。伝統と技術の融合により、持続可能で美しい製品が生み出され、その魅力は今後も広がり続けることでしょう。
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